Oracleの参入でRed Hatが衰退との見方は早計か

時事解説:ひょっとするとOracleは、Linuxのサポートサービス分野に突如参入し、身の丈を超えた獲物を勝ち取ろうとしているのではないだろうか。きれいに髪を撫でつけた貴公子然とした姿で歯に衣着せぬ物言いをする自信家、Larry Ellison氏と彼の率いるこのデータベース帝国に対するのは、特にビジネス界ではほとんどLinuxの同義語としての扱いを受け、長らくフリー/オープンソース・コミュニティを支えてきたRed Hatだ。

この話は、報道関係者の間をゆっくりと伝わるうちに形を変えてきた経緯がある。最初は、Oracleが独自のディストリビューションを世に出そうとしているとの見方が大勢を占めていた。だが、Oracle OpenWorldにおけるEllison氏の声明が出された今では、OracleはRed Hatディストリビューション向けのサポートサービスを提供することでRed Hatの売り上げをただ奪い取ろうとしているように見える。

上記の話題において次のような質疑の内容を知った。記者が「Red Hatはどうなるのですか。意図的ではないにせよ、Red Hatを崩壊させてしまう結果になりませんか」と質問したところ、Ellison氏は「我々は競争している。より安価でより良い製品を提供するつもりだ」と答えたという。そのとき、30年に及ぶIT業界での経験によって培われた、あらゆるFUD(恐れ、不安、疑念)を敏感に察知する私の直感が反応したのは、先に述べたような背景があったからだ。

1つ言えるのは、OracleはRed Hatよりも安い価格の提示が可能であり、また明らかにそれをねらっているわけだが、パフォーマンスの点ではRed Hatにはかなわないということである。Oracleには、LinuxおよびLinuxカーネルのコミュニティにおける知識、経験、帰属感が欠如している。Red Hat Linuxのことで問題が起きたとき、あなたなら(Red Hatの)Alan Cox氏と(Oracleの)Larry Ellison氏のどちらに助けを求めるだろうか。

もう1つ、Ellison氏のいかにも強気な態度には不自然さが感じられる。彼はもっと自分を皇帝ナポレオンのように見せたいのだろうが、実際にはワーテルローの戦いにも匹敵する自らの苦境に悩んでいるのではないだろうか。Ellison氏の動きはRed Hatの滅亡とOracleの一方的勝利の始まりなどではなく、この新たなフリー/オープンソース・ソフトウェアの時代に直面してもなお強気を装う、ひと昔前の偶像の典型例を示しているに過ぎない。

NewsForge.com 原文