Sunrise:革新的なMac用ウェブ開発者向けブラウザ

 Sunrise Browserは、ウェブ開発者がツールとして使うことを想定して開発されているMac OS X用のオープンソースのウェブブラウザだ。Sunrise Browserはウェブ開発者ツールとして画期的な偉業を成し遂げたというわけではないものの、ユーザインターフェースに関して革新的で独特なものも多くあり、試してみる価値のある一品だ。

 SunriseはフリーソフトウェアであるWebKit HTMLレンダリングエンジンをベースとしている。WebKitはもともとKDEのKonquerorのために開発されていたが、今ではSunriseの他にAppleのSafariやNokiaのS60 Browserでも使用されている。Sunriseの最新リリースは1.0.1で、Universal Binary形式で入手可能になっている(OS X 10.3かそれ以降の環境が必要)。Sunriseパッケージの大きさはわずか752KBだ。バイナリはApplicationsフォルダにドラッグ&ドロップすることができるようになっており、インストーラやクリックスルーライセンスの必要はない。ソースコードはGPLの下にライセンスされており、同じページからXCodeプロジェクトとしてダウンロードすることができる(大きさはちょうど1メガバイト強だ)。

ウェブ開発のための機能

 Sunriseのウェブ開発者向けの主な機能には、ワンクリックのウインドウサイズ変更、ページのスナップショット作成、HTMLソースの高度な閲覧、ページの拡大/縮小などがある。最初の二つは複雑なものではない。まずワンクリックのウィンドウサイズ変更は、右上端にあるボタンとして実装されているもので、640×480、800×600、1024×768、フル画面サイズと大きくしていくことができる。これはレイアウトのテストを行なうには便利だが、この機能のためだけにブラウザをわざわざ移行するほど興味深い機能だというわけではない。一方、二つめのスナップショット作成機能は「Page Shot(ページショット)」と呼ばれており、キーを1つ入力するだけで、現在表示しているページの描画内容(範囲は、現在ウィンドウ内で目に見えている部分のみか、あるいはページ全体のどちらか)のPDFファイルを作成することができる。スナップショットの保存先はユーザが選ぶことができ、Sunriseが保存ファイルに自動的に番号付けをしてくれる。おそらく間違いなくOS Xに統合されているPDFサポートのおかげなのだが、Page Shotは非常に高速だ。とは言えウィンドウのサイズ変更と同様にこの機能についても、あれば嬉しいが必須のオプションというわけではない。

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Sunriseブラウザ(クリックで拡大)

 一方、高度なソース閲覧コンポーネントは上記の2機能よりもずっと魅力的だ。その理由は二つあり、一つにはソース閲覧ウィンドウが半透明であることだ(なお、ソース閲覧ウィンドウの透過度は思い通りに調節可能であり、ページの描画結果のウィンドウの上に重ねて置くことができる)。またもう一つの理由は、(これはソース閲覧ウィンドウが半透明であることが便利である理由でもあるのだが)ページのソースを編集することが可能になっているということだ。そのためソース閲覧ウィンドウの中のコードを変更してすぐに、ページの描画結果のウィンドウにおいてその変更が反映されるのを確認することができる。なお当然ながら編集できるのはローカルでキャッシュされたHTMLファイルであり、サーバ上のオリジナルのページではない。それでもテストを行なう際には、この機能を利用すると時間をとても節約することができる。

 またページの拡大/縮小機能では、現在表示しているページの表示サイズを10%から400%までの間で自由に変更することができる。この機能はツールバーのプルダウンメニューから実行することができるので大変便利であり、またページがリロードされるのを待つ必要もない。なお、ページの拡大/縮小機能を使いこなすという観点から、この機能が行なうことと行なわないこと、つまりコンテンツはリロードされるのではなく再描画されるだけだという点を理解しておくことが重要だ。ちなみに10%に縮小すると長いページの構成の全体像を素早く確認することができ、400%に拡大するとパディングやカーニングや各要素の配置といった微調整を行なうのに都合が良い。ただし拡大されたコンテンツは、ラスタ画像については引き延ばされてざらつくのだが、一方でフォントやHTML要素などのベクトルベースのコンテンツについては滑らかなままなので、初めて見ると奇妙に感じる。

 その他にもSunriseには、開発者にとって嬉しいこまごまとした機能が用意されている。例えばキーを1つ入力するだけで、現在表示しているページをシステムのデフォルトのブラウザを起動して表示することが可能だ。また現在表示しているページを自動的にW3CHTML/CSS準拠検証サービスに通すことなどもできる。

その他の機能

 Sunriseには、プロジェクトのホームページで「デザイナー指向」と謳われている機能がいくつかあるのだが、私はそれらの機能が便利であるということは理解できるものの、ウェブデザインとの直接的な関係を見い出すことができなかった。例えば「Draw URL(URLを記述)」という機能があり、キーボードショートカットを入力すると、現在表示しているページのURLを表示するフル画面幅のウィンドウがポップアップするようになっている。Sunriseの文書によるとこの機能はプレゼンテーションに役立つということだった。それはそうなのかもしれないが、ウェブ開発のために便利だというわけではない。

 またSunriseでは、現在表示しているページからリンクしている全CSSスタイルシートのリストをポップアップさせたり、キーボードだけを使って現在のURLをコピーしたりすることができる。

 それ以外にも、ウェブ閲覧体験一般に関する改善点や機能もいくつかある。その代表例は、ブックマークされた各ページから自動生成したサムネイル画像を使用する、グラフィカルなブックマークマネージャだ。私が日頃常々感じている不満の一つに、すべてのページに同じタイトルを付けているサイトや、すべてのページのタイトルの前にサイト名を入れているサイトがあり、それによりサイドバーの中など幅の狭いウィンドウ内に文字としてページの一覧を表示すると、区別が付かなくなってしまうという問題があるのだが、グラフィカルブックマークはこのような問題を解消するのに役立つ。

 またSunriseでは、リモートファイルを保存するためのダウンロードを開始する際にポップアップするダイアログが優れている。このダウンロードダイアログでは編集可能なテキストフィールド内にURLが表示されるため、(画像ファイルなどの埋め込み型のメディアファイルに関して時折見られるように)明らかに意図的に変形したURLである場合にはURLを修正することができる。またこのダイアログでは小さなチェックボックスが付いていて、「完了したらオープンする」ということもできる。さらに、このダイアログではローカルの保存先フォルダの指定も簡単にできる。

まとめ

 Sunriseには革新的な機能がある一方で足りない機能もあり、「完全なブラウザ」と呼ぶにはまだ程遠い。足りない機能の筆頭としてはタブ表示機能が挙げられるのだが、この機能なしではやっていくことができないというユーザは多いだろう。またインターフェースに多少まずい部分もある(ただしこれは開発版のコードであるためなのかもしれない)。例えばウィンドウのタイトルバーが通常のOS Xアプリケーションのものより小さめであることや、(ウィンドウのサイズを変更すると)ツールバーの一部のボタンの並びがおかしくなったり、ボタンの文字が読みにくくなったりする。また現時点でのSunriseにはトップレベルのメニュー項目が10個もあるため、MacBookやiBook上ではどのメニューアプレットも押し出されて画面の端から完全に見えなくなってしまう。

 最後に、私にはその目的がまったくわからない新機能もいくつかあった。一例としてはウィンドウの透過度の調整機能がある。前述したソース閲覧ウィンドウが半透明である理由は私にも理解でき、その理由は何かと言えばHTMLを編集して変更点をその下に見えるウィンドウで確認することができるということだ。しかしページウインドウの透過度を落とすと都合が良い理由はまったく思いつかない。またこれはおそらくとても些細なことなのだが、現在表示しているページのfaviconをメニューのショートカット経由でローカルに保存することができるという機能があるとSunriseのホームページで高らかに謳われている。もしこの機能が(他のブラウザでは欠けているために)あなたが探し求めているものであるなら、そういう人にとってはこの機能は良い知らせなのかもしれない。

 とは言え私はSunriseを心から応援したい。私たちはウェブブラウザというものにあまりにも慣れてしまっているので、誰かが新しい方向に踏み出し一から新しく開発を始めるというのはちょっとした驚きに値する。Sunriseの開発を通して生まれたアイデアや機能の多くはFirefox拡張として再実装され、より多くのユーザに使われることになるだろう。

 「ブラウザに統合されたウェブデザインツール」というアプローチが優れているということは間違いないことだ。10年前には、私たちはみなDreamweaverのようなアプリケーションの中でページのレイアウトを行ない、その後サーバへアップロードするといった作業を行なっていたかもしれないが、今日では実際的なデザイン作業のほとんどはサーバサイドのスクリプトやJavaScriptやCSSによって行なわれている。そのためブラウザに統合されていないウェブデザインツールは廃れていく可能性がある。とは言え、Sunriseは、まだDreamweaverのような有力なアプリケーションに取って代わるほどの完成度ではなく、またその機能の大部分はFirefoxに拡張をつぎはぎすることで実現可能でもある。しかしそれでもなおSunriseが尊敬に値するソフトウェアであることに変わりはない。

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