Katapult――キーボード操作至上派の必須ツール

 コンピュータの操作中には可能な限りキーボードから手を離したくないという人間にとって、アプリケーションの新規起動、フォルダやドキュメントのオープン、再生中の楽曲トラックの変更などのマウス操作を前提とした作業は鬼門とでも呼ぶべき労苦だ。そうした向きにお勧めなのがKatapultという、Alt-F2で呼び出す実行ダイアログ以上の機能を秘めた多機能アプリケーションランチャである。

 メニューを介すことなくアプリケーションを起動したければAlt-F2による実行ダイアログを使うのが一番お手軽な方法ではあるが、これには入力テキストのオートコンプリート機能が装備されていないので、目的のアプリケーションをフルネームで指定しなければならない。これに対してKatapultの場合、Kメニューに登録されたアプリケーション名を基にして、ユーザの入力するアプリケーション名を自動的にオートコンプリートしてくれる。しかもこのユーティリティの機能は、アプリケーションを起動するだけではないのだ。具体的には、ブックマークしたアドレスへのアクセス、Webブラウザ上でのネット検索、電卓による数値計算、スペルのチェック、フォルダやファイルのオープン、楽曲トラックの変更といった、通常はマウスで操作する作業がKatapultを介すだけで行えるようになるのである。

 Katapultのインストールに難しい点は何もない。事前の準備としては、KDE 3.4以降あるいはGCC 3.3以降という要件を満たしているかだけを確認しておけばいい。次にソースを格納したtarボールをダウンロードして、「tar -zxf katapult-バージョン.tar.gz」というコマンドで展開しておく。次にファイルを展開したディレクトリに移動して./configureおよびmakeによるKatapultの設定とコンパイルを実行する。最後にルート権限を取得して「make install」を実行すれば、ユーティリティのインストールは完了である。

 Katapultの起動は、Kメニューにアクセスして行うか(ディストリビューションによっては何か別のサブメニューに収められていることもある)、Alt-F2の実行ダイアログから呼び出せばいい。こうしたKatapultの起動は一度必要なだけであり、その後は再起動ごとに自動実行されるようになる。

 待機状態のKatapultについては、時計横のパネルにアイコンが表示されているだけである。この状態でAlt-Spaceを押し下げると、Katapultランチャがポップアップする(このキーコンビネーションについては他のアプリケーションと競合する可能性もあり、例えばMandrivaの場合は、Kerry Beagle検索ツールの起動にAlt-Spaceが割り当てられている)。

 Alt-Spaceの押し下げ後は、起動させたいアプリケーションの名前を入力すればいい。その際にKatapultはユーザによるキーストロークに応じて、起動すべき対象がアプリケーションであるのか、その他のファイル、フォルダ、ブックマーク、楽曲トラックなどであるのかを自動的に判定してくれる。また入力開始時にアルファベットではなく数値で始まる計算式を入力すると、Katapultによって計算機が呼び出され、ユーザの入力に対する計算結果が順次表示されるようになる。

 Katapultはスペルチェッカとして使うことも可能で、それには最初に“spell”と入力してスペルチェック用プラグインを起動させてから、確認したい単語を入力すればいい。同様に“google”と最初に入力することでWeb検索も行える。また“exec”を指定すれば、Katapultを介したコマンドの直接実行もできる。例えばミュージックプレーヤのAmaroKを終了させたければexec killall amarokと入力すればいい。

 Katapultのファイル/フォルダ検索に関しては、トップレベルのhomeディレクトリしか検索できないという、非常にわずらわしい制限が存在している。そのためDocuments/ディレクトリの下層に格納しておいたドキュメントなどは、Katapultからの検索ができない。

GNOMEに関するオプション
 KatapultはKDEユーザによる使用しか想定されていないが、GNOMEユーザに関しても同様の機能を実装するオプションが存在している。その1つがGNOME Launch Boxであり、これもKatapultと同様にMac OS XのQuicksilverアプリケーションランチャに触発されて作られたユーティリティだが、開発の初期段階にあるためか、私の試した限りにおいてUbuntu Edgy Eftから起動するごとにクラッシュしていた。

 GNOMEのDeskbar Appletはこれらとは異なるアプローチを採用したソリューションだが、操作性の高さはQuicksilver系ユーティリティに匹敵するレベルに仕上がっている。そのインストールはGNOMEのアプレットマネージャにて行う。このアプレットもプラグインによる機能の拡張や、アプリケーションの起動およびブックマークのオープンといった操作に対応している。その他、複数の検索エンジンを使い分けたり、Evolutionのコンタクトリストの閲覧や電子メールメッセージの送信をすることもでき、また各種のブラウザとの親和性も高く、閲覧履歴を検索するといった操作も行える。

Katapultの動作設定

 Katapultの本体および各種のプラグインについては、ユーザによる動作設定を施すことができる。こうした設定は、パネル上のKatapultアイコンを右クリックして呼び出すコンテキストメニューから行うが、同様のメニューはAlt-SpaceによるKatapultランチャの起動後にCtrl-Cを押し下げて表示させることもできる。このメニューで設定できるのは、Katapultランチャ起動用のキーコンビネーションおよび、コンテキストメニューの呼び出しやKatapultを終了させるためのショートカットなどである。

 この中で特に重要なのはConfigure Katapultで、これを選択するとKatapultの設定ウィンドウが表示される。ここでは個々のプラグインごとに個別の設定セクションが設けられている。例えば、Google検索やスペルチェッカのプラグイン起動用キーワードを変更したり、計算の実行を通常の電卓ではなく科学計算用の電卓で行わせるなどの指定は、それぞれの設定画面で行えばいい。その他、Katapultのランチャ上でファイルのプレビューを表示させるかも指定可能だ。

 Katapultはテーマによる外観の変更にも対応しており、現行バージョンには3種類のスキンが同梱されている。テーマの変更も設定ウィンドウで行えるが、その他の細かな設定として、ランチャのフェードイン/フェードアウト時間などエフェクト関係の変更も施すことが可能である。

 Katapult開発陣は操作用ハンドブックをKatapultのwikiサイトに用意しており、ここでは実際の動作画面を収めたスクリーンショットを確認することもできる。その他にKatapultのインストールや実行で不明な点に遭遇したら、Katapultフォーラムの過去ログを参照するか新たに質問すればいいだろう。

 Katapultは小型で多機能なアプリケーションに仕上がっており、特にキーボードから手を離すのが億劫というユーザに歓迎されるはずだ。その使用には複雑なキーコンビネーションをマスターする必要もなく、チャットや計算作業中にBGM用の楽曲トラックを変更したり、英文入力中にスペルチェックをしたいという場合に重宝するはずである。実際、Katapultの操作法はきわめて簡単であり、操作法をマスターするという表現は大げさすぎるだろう。

Linux.com 原文