2分でわかる中国でのITアウトソーシングパートナーの見つけ方

 IT開発プロジェクトの中国へのオフショアリングを検討中の企業が求めているメリットは、単純なコスト削減の域を超え、高い教育を受けた労働力、世界に通用するITインフラストラクチャ、転職率の低い従業員、知的財産の保護に対する積極的な態度といったものへと拡大している。事実、中国はIT開発/アウトソーシングの展望を、インド、タイ、フィリピンのような国々が市場にひしめく低コスト指向の戦略から、より優れた価値と人材、重要な組織的主導権を伴った提携を重視したものへと転換しようとしている。

CEO(最高経営責任者)、上級幹部社員、または理事会から中国へのオフショアリングの承認を受けたあとには、企業が国外のアウトソーシングパートナーを探し出すことの実現可能性と価値を評価するための3つの重要な手順が存在する。

パートナー候補を明らかにする ― IT調査会社Gartner, Inc.によると、アジアには約30,000のITおよびソフトウェア会社があり、そのうちおよそ10,000社が中国政府公認のソフトウェア会社である。その多くは最低限のプロジェクト管理機能と構築機能しか持たない小規模な会社だが、若い開発者たちは主としてJava、Windows、汎用のCプログラミングの各環境を重点的に扱っている。

 こうした規模の会社には一般に25~50名ほどの社員しかいないため、扱えるプロジェクトの範囲には制限がある。このような会社の中にはオフショア開発を得意とするところもあれば、電子政府やゲームなど特定の分野を専門に扱う傾向の強いところもある。会社による品質の差が大きいため、慎重な選択のうえでオフショアへの移行を決断すること。

 国外のパートナーを探すときには、Fortune 1000社がオフショアリングのニーズをどこに向けているかに注意する。資金面における検討事項は中小企業のそれとは違うかもしれないが、そうした企業グループは考慮すべき要件の適切な重み付けや最もふさわしいパートナー選択を行うためのベンチマークとみなせる。たとえば、BoeingやCitibankにとって好ましいパートナーは、コンシューマ指向の会社にとって申し分のない条件を揃えている可能性がある。

 また、新たに獲得した人材プール、開発環境、戦略的提携関係を誰が活用するのかも検討すること。オフショア移行の妥当性を判断するにあたって、コストは確かに主導的な要因だが、パートナー側は世界でもトップクラスの開発者、重要なグローバルベンダとの関係、最新テクノロジの提供といった点を十分に意識しているはずだ。この点については、すでにITアウトソーシングのコミュニティにおいて高い評価を得ている企業の事例をあたってみるのが最善である。

 さらに、パートナー候補の最終決定の前には必ず顧客との取引履歴をチェックしておく。人目を惹くWebサイトは大いに結構だが、会社名や実際の運用実績が正確にわからない場合は、ほかの顧客の意見を探し出すしかない。

クオリティに目を光らせる ―パートナー候補が5ないし10社ほど集まったら、以下の5項目の質問を各社に投げかけて選考を行う。

1) 拠点はどこにあるか、なぜそこに置いているのか

 どんな場所も人材とコストに対して何らかの影響力を持つ以上、特定の地域においてプレゼンスを確立する理由をパートナーが説明できることは重要である。地域によって特定の開発分野における賃金構造の違いはもちろん、労働力の特性や専門性にも違いがある。

 たとえば、中国へのアウトソーシングを検討中のある企業が日本向けの顧客サポートが行えるところを探しているなら、大連に拠点を持つパートナーを探すのがベストだろう。この都市は、以前から日本向けのアウトソーシングを請け負ってきた実績がある。また、アプリケーション開発の人材を求めているなら蘇州に拠点がある会社、BPOサービスを委託するなら崑山の会社がよいだろう。企業は、自らの目的とそれにふさわしい地域の双方に目を向ける必要がある。

2) 従業員の平均的な経験レベルはどれほどか

 複雑なプロジェクトでは、ソフトウェアの純粋なプログラミング以外にもさまざまなスキルが要求される。製品のリリース、コードの見直し、新バージョンのリリースなどでは、システムの構築やインテグレーションのスキルも求められる。プロジェクトのフロントエンド製品を企画するのに、経験年数1年のJavaプログラマは必要ない。その場合は、さまざまな分野の経験を持つ人物を社員の中から探し出すことになる。

3) コミュニケーションスキルはどの程度あるか

 新たなアウトソーシングパートナーを得た企業に起こる最悪の事態は、言葉の壁や文化の違いによって十分な意思疎通がとれないことである。中国のIT関連会社の多くはプログラミングや欧米の製品仕様に従った製品開発に精通しておらず、ときには英語による文書が最小限しか、あるいはまったく作成されないこともある。企業は、選定したIT関連会社が十分なコミュニケーションスキルとビジネスまたは文化に関する独自の意思疎通の手段を持っていること、全員の間で目標が共有されていてスケジュールと現状とのズレが生じた場合には十分な意思疎通がとれることを確認する必要がある。

4) 従業員の離職率はどれくらいか

 ここ数年、インドのIT関連のアウトソーシング会社は離職率の高さに悩まされている。Fortune100社に名を連ねる大企業が開発リソースを求めてムンバイ(ボンベイ)やバンガロールに進出してきたためだ。せっかくパートナーを得ても、その従業員の4人に1人がGoogleやIBMに取られてしまってはたまらない。こうした事態を避けるには、パートナー候補に過去1年間にわたる四半期ごとの離職率を尋ね、多国籍企業で職を得るための単なる短期養成所になっていないか、従業員の長期雇用を重視する安定した環境が整っているかを判断するとよい。

5) 問題が起きたときは誰に連絡したらよいか

 知的財産権への配慮、ソフトウェア品質のばらつき、従業員の離職、賃金の高騰、インフラストラクチャの重要性といった要素をはらんだ業界において、企業は自らの選んだパートナーが組織と自分たちの製品を十分に守ってくれることを確信できなければならない。

 ビジネスの世界にはどこにでもリスクが転がっているため、パートナーとはビジネス倫理と経営上の基盤を共有できることが理想である。たとえば、欧米式のやり方を経験したことがある、または米国進出を果たしているアウトソーシングパートナーが見つかれば、非常に好都合であり、何か問題が起こってもインドやベトナム、タイまで飛んで行く手間が省ける。また、普通は互いに協力し合う必要がある技術チームとアウトソーシング開発チームの文化的または物理的な距離も縮まることになる。

信頼関係を構築する ― アウトソーシングパートナーの選定が終わったら、お互いの関係づくりに注力する。効果的な開発計画の策定、スケジュールどおりの作業遂行、成功裡の提携関係発展のためには双方の協力が欠かせない。そのような基盤はプロジェクトごとに発展していく長期的な関係の確立へとつながり、自社の取引先から専任の提携先アウトソーシングパートナーへの知識移転を成功させる。

 パートナーの価値観は、取引先の技術的努力が自然に発展したものと考えればよい。上層部どうしが協力関係を築けば、機密情報および重要な技術検討事項の共有が始まるだろう。その結果、ソフトウェア開発サイクルが数か月短縮されることさえある。

 一方、開発プランを受け取って単独で作業を進めるアウトソーシングパートナーが、本質的な開発ニーズを心から理解してくれることはない。つまり、適切なアウトソーシングパートナーとは、設計、納品、開発上のソリューションにおいて融通が利き、好ましい反応を返してくれるパートナーなのである。

 以上の指針に従えば、将来の技術的ニーズにとって貴重な開発チームが見つかるだけでなく、コスト削減、製品化の加速、さらには海外市場でのプレゼンスという最善の組み合わせを手に入れることができるだろう。

Matthew GrowneyはDarwinSuzsoftの執行副社長(EVP)兼最高戦略責任者(CSO)。

ITManagersJournal.com 原文